原子力概論 最終更新期日:2020.12.15

 九州工大工学部 第34年次 後学期 選択 2単位

担当(非常勤講師) 岡本 良治

1. 目的
 
 原子力は核兵器、原子力発電、医療用、非破壊検査など多くの分野で利用されている。
しかし、2011年の福島第一原発事故の発生以後,原子力発電をめぐる問題は、事故の危険性、エネルギー資源の選択、
地球環境問題などと関連して社会問題化している.また,2019年,米国が中距離弾道ミサイル全廃条約を破棄後,1980年代の核軍拡競争が再燃する可能性が大きくなっている.

本講義の目的は原子力(核エネルギー)をめぐる基本的事実と諸問題を、理工系学部の学生として科学的に判断できる
ように、原子核と放射線についての基礎的知識と論点を教授することである。

 

2. 授業関連通知(レポート、試験実施要領等)

 

202057日からのオンライン講義の実施により、従来とはかなり異なる事態が想定されるので、随時,対応せざるを得ない(2020.10.69

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HPの利用法:各章の要約→例題→詳しい解説(*印ファイル)

予習・復習など学習の仕方についてのアドバイス:

1) まずは大まかに捉えるべし

2) きちんと手順を踏んで覚えるべし

3) 何度も失敗を繰り返し覚えるべし

   池谷裕二「記憶力を強くする」講談社、ブルーバックス、2001. P.139.より)

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3.授業用の参考資料
1)
はじめに

説明(要点): 自然における原子核現象と社会における原子力・核問題 

物理定数 
2)
原子分子の世界
要点:原子・分子と巨視的物質
 

少し詳しい解説:原子,分子とそれらの集合体 
例題:原子と原子核の比較、関係
例題:電気力と重力の比較(原子内には強い電気力が働いていること)
 2019.12.11加筆修正
題:原子の大きさ、単位体積あたりの個数 

3)
原子核の基本的性質

要点:原子核の不思議さ 

核図表(理化学研究所HPよりダウンロード可能) 

少し詳しい解説: 原子核の基本的性質とその不思議さ  
2核子系の不思議
核力と核構造
核子あたりの結合エネルギーの質量数依存性と核図表       
参考:原子核の中に電子は束縛できるか

例題:原子核における速度と反応時間 

例題:α粒子の結合エネルギーと光分解 
例題:重陽子とウラン235核の結合エネルギー、質量欠損
 

例題:C-12核の陽子、中性子の分離エネルギー 

例題:結合エネルギーの半経験公式 

例題:中性子星を中性子だけからなる巨大原子核とみなしてその半径、質量の推定


4)
放射性崩壊

要約:放射性崩壊 

少し詳しい解説:放射性崩壊 

例題:三重水素(トリチウム)核のベータ崩壊 

例題:ベータ崩壊で解放される最大エネルギー(Q値)

例題:ラジウム226のアルファ崩壊 
例題:210Poと226Raの放射能毒性の比較              
例題:体内のK40の放射能の強さ
 

例題:崩壊熱とは何か 

例題:Pu-239, Pu-238の崩壊熱 

例題:オクロ鉱山の天然原子炉の時期推定 

例題:比放射能の計算例1
例題:崩壊系列 (ウラン238核の半減期は約45億年) 
 


5)
原子核反応

少し詳しい解説:原子核反応  
反応の断面積(図)
例題:ホウ素による熱中性子吸収反応

例題:中性子の減速 

例題:反応率の計算 

例題:ウラン235に対する熱中性子の平均自由行程 

例題:鉄に対するニュートリーノの平均自由行程


参考:ニュートリノは体内を毎秒1兆個以上も貫通するって本当? 

参考:空気中における高速中性子の平均自由行程 

6)
放射線と物質の相互作用
要約:放射線と物質の相互作用
 

少し詳しい解説:放射線と物質の相互作用   
例題:コンプトン散乱
例題:ガンマ線(X線)の鉛による減衰
 

例題:ガンマ線(X線)のコンクリート,水と空気による減衰 

例題:中性子数のカドミウムによる減弱 

例題:放射線測定装置における信号増幅

7)放射線の利用と防護 

要点:放射線の生物への影響と防護・緩和 

解説:放射線の生物への影響と防護・緩和 

 放射線の種類による透過率の違いと遮蔽(しゃへい)法(図)
例題:放射線の影響 
参考:生体内の化学物質の放射性同位元素の追跡結果の意味すること

8)核分裂とその連鎖反応
要約:核分裂とその連鎖反応 

詳しい解説:核分裂とその連鎖反応 
核分裂と解放されるエネルギー、核分裂生成物(図)
核分裂連鎖反応と臨界条件(図)

例題:核分裂によるエネルギーと電気的斥力エネルギー

例題:核分裂という要素的過程と巨視的現象の間

例題:核分裂1(計算例)  

例題:核分裂2(計算例) 

例題:核分裂3(電気的斥力による核分裂エネルギーの推定)

例題:自発核分裂(Pu-238,Pu-240)による中性子発生率 


9)
原子炉の構造と仕組み
解説(要点)原子炉の構造と仕組み 
例題:熱中性子炉における減速材
  
例題:原子炉におけるウラン235の燃焼量
 

例題;原子炉の二つの働きなど 

例題:原子炉2(燃焼度)

例題:原子炉3(燃焼度)

 

問:原子炉の中に使われている水の,通常運転時や事故の際の3つの役割

について説明せよ.

問:原発で発生する熱エネルギーについて次の問に答えよ.

1)核分裂により発生するエネルギーを簡単に説明せよ.

2)崩壊熱とは何か説明せよ.

3)通常の運転時に発生する熱エネルギーの中で核分裂,崩壊熱による割合を記せ.

問:なぜ日本の原発は海岸に立地され,欧米の原発は内陸に立地されているのか,

説明せよ.

問:燃料被覆材の目的と性質,事故の際に重要な点を理由をつけて述べよ,

問:原発の熱効率を火力発電と比較して,関連事項を含めて説明せよ.


10)福島第一原発事故とその現状と今後
 2019.1.16

例題:セシウム137の1グラムによる放射能の強さ

例題:セシウム137の放射能の強さが100ベクレルに相当する質量 

例題:福島第一原発事故で放出されたセシウム137の放射能の強さに相当する質量 

例題:原発に外部電源,非常用電源が必要な理由とそれらを喪失した場合の影響 

例題:福島第一原発事故の際,窒素ガスやホウ酸水を混入させた理由 

 

1) 使用済燃料と高レベル放射性廃棄物問題 

要点:使用済燃料と高レベル放射性廃棄物問題 

例題:使用済み核燃料1 

例題:使用済み核燃料2 

例題:使用済み核燃料3

例題:高レベル放射性廃棄物 


12)
核融合入門

要点:核融合入門 

詳しい解説:核融合入門 

例題:DT反応の反応熱(Q値) 
例題:DD核融合反応におけるクーロン障壁と熱平衡温度
 

例題:太陽で発生するエネルギー 
例題:太陽の寿命の推定
 


13)
核兵器の科学的・技術的分析

要点:核兵器の科学的技術的分析 2021.1.19新規

 

例題:核兵器の威力密度の変遷 

例題:高速中性子によるウランの核分裂連鎖反応における世代時間 

例題:高速中性子によるプルトニウムの核分裂連鎖反応における世代時間 

例題:部分的な核分裂連鎖反応による熱膨張 

例題:核爆発により解放されるエネルギーの大部分は高速中性子による核分裂連鎖反応の最後の数世代で発生 

 

14) 核兵器の効果と核戦争の影響評価
要点::核兵器の効果と核戦争の影響
 

 

例題:核兵器使用の物理的効果 


3.評価方法
中間試験(30%)、期末試験(40%)、レポート(30%)という割合で評価する。

 

4.履修上の注意事項

基礎学力として物理学I、物理学UA・UBを履修しておくことが望ましい。
統計力学、量子力学も履修していれば、本講義の理解はより深まると思われる。
原子力(核)問題については、新聞、雑誌等に数多く学習材料が現れるので、
これらのことに自主的に関心をもち、資料を収集分析することが望まれる。なお、
関連する専門学科の諸科目にもしばしば関係する話題ができると思われるので、
相互の関連性も意識的に考えておくことが望ましい。
 
5.教科書・参考書(教科書1、参考書25の予定)